航海を通して仲間意識を育む

砂浜もサーフィンもないけれど、スチールビーチは太陽の下での休息の時間でした。“ジェネラルクォーターズ”と呼ばれるバンド演奏も時々ありました。甲板の上で読書をする乗員もいれば砲塔の上でくつろぐ者、後方で皆で縄跳びをしたり思い思いに過ごします。観光客のいない“スチールビーチ”でハンバーガーを焼いたりと、任務から離れた休息のひと時です。-1986年戦艦ミズーリ航海日記より。

スチールビーチの雰囲気

海軍の生活と聞くと、広大な海を大きな船で航海している姿を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。規則正しい生活と厳しい訓練の中にもスチールビーチと呼ばれ、海軍の休養と回復のための人間味溢れるユニークな伝統が存在しました。乗員に親しまれたこの活気ある海上での休息時間のイベントを通じ、仲間意識は育まれていきました。

スチールビーチピクニックとは?
スチールビーチピクニックとは、乗員が集い、忙しくせわしない甲板が休養の場所へと変わる伝統的な海上生活です。かつては甲板のスチールの上で行われていた事から、“スチールビーチ”と呼ばれるようになりました。

グリルチキンを指さすConklin 1等兵曹長。

海上での生活は厳しく孤立したものでもありますが、そのような生活の中でスチールビーチピクニックは日常の生活から精神的にも解放され、仲間との交流を通じて士気を高めて前向きな環境を作るものでありました。閉塞的な空間の中で良い対人関係を築いていく事は極めて重要です。スチールビーチピクニックを通して乗員たちは、仕事の枠を超えて、時には生涯にわたる深い絆を育んでいきました。

45日間の航海で、ビールを飲んでご機嫌の乗員。海軍では、航海45日を過ぎるとそれぞれビール2杯まで飲む事が許可されましたので、ミズーリの艦尾のファンテイルではスチールビーチピクニックが催され、乗員たちはビールを飲みながらおいしい食事と音楽と、楽しい午後を過ごしました。大変な日々の中で気持ちの沈む乗員もいましたが、ピクニックを行う事によって再び生気を養う事が出来ました。

テクノロジーの発達と共に船のオペレーションは変わっても、海軍の精神を反映した乗員の幸福のためのスチールビーチピクニックの伝統は変わりません。

1987年8月、西太平洋でのミズーリのスチールビーチピクニック
(提供:Western Pacific大佐)

海軍のスチールビーチピクニックはただのピクニックではありません。困難な中でも楽しみを見出し、団結力や人間の精神の回復力の強さを証明する時代を超えた伝統です。そして、このピクニックの伝統は海軍の船が海を航海する限り続いていきます。

乗組員の仕事や生活の様子を理解するために、その家族や友人が特別に一緒に乗艦する事が許された航行の事をタイガー・クルーズと言いますが、こちらのビデオは1988年のパールハーバーからカリフォルニアのロングビーチまでのミズーリのタイガークルーズで撮影されたものです。乗員とゲストがスチールビーチを楽しむ様子をご覧頂けます。

ビデオ撮影:Kenneth Bowen氏、提供:元乗員, Eric Bowen氏

写真提供:リードシンガーのCharles Barton元乗員

投稿者: senkanmissouri

歴史的な過去と現代の技術の共存する船、戦艦ミズーリは、訪れた人々に歴史の痕跡と真実を巡る機会を提供する記念館として一般公開されています。戦艦ミズーリ記念館は展示物、過去の記録、ツアーなどを通じて、皆さまに艦上での生活について詳しく学んでいただけます。現在公開されている戦艦上の多くの部分は、ミズーリ号が就役していた当時の状況をほぼ忠実に再現しています。当時の戦艦内の設備や生活の様子などをご自身の目で確かめに、ぜひご来館ください。

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